顔面神経麻痺Q&A
(Q11~Q15)
Q11耳下腺癌手術の後、顔面神経麻痺になりました。3年経過し癌の再発はありませんが顔は全く動きません。どうすればよいでしょうか?
耳下腺癌や良性の耳下腺腫瘍の手術中に顔面神経を切断した場合も、そうではない場合も、顔面神経麻痺が自然に回復する時期は過ぎています。
全く動きのない完全麻痺であれば、表情を作る顔の動きや左右の対称性を回復するためには手術が必要です。
眉毛が上がらない眉毛下垂、それに伴う見かけ上の眼瞼下垂、まぶたが閉じられない兎眼、口元が下がる口角下垂、唇が反対側に寄ってしまう口唇麻痺などの症状に対して、日帰りでできる局部麻酔の手術もありますが、入院や全身麻酔が必要な場合もあります。
顔面神経麻痺を扱っている耳鼻咽喉科や形成外科に相談してください。
また、眼の痛みや充血などの症状があれば眼科も受診することをお勧めします。
Q12顔面神経麻痺のリハビリテーション治療について教えてください。
顔面神経麻痺(脳卒中によるものを除きます)は後遺症である拘縮や病的な共同運動をいかに起こさず、起きても少なく保つことが大切です。専門家の指導を受けながら、表情をつくる筋肉(表情筋)を固くせずリラックスさせ、ひきつった表情にならないように小さく・ゆっくり動かす必要があります。まずはストレッチを中心に実施することが良いでしょう。長期にわたる場合は1年以上も経過が必要な場合がありますので、焦らずゆっくり対応するように心がけてください。本学会認定の顔面神経麻痺認定相談医やリハビリテーション指導士に相談しても良いでしょう。
Q13顔面神経麻痺の治療として、低周波治療(電気刺激)を勧められました。受けた方がよいでしょうか?
低周波治療(電気刺激)は、電気を用いて神経筋を刺激することで筋収縮を起こす治療です。四肢の骨格筋に対して、筋を個別に刺激することで廃用性筋力低下等を防止するために行われることがあります。一方、顔面表情筋は非常に小さく近接して存在しているため筋を個別に刺激することは難しく、麻痺側全体の粗大で強力な筋収縮を誘発してしまいます。その結果、神経断裂線維の迷入再生を促通して病的共同運動を引き起こしたり、顔面神経核の興奮性を高めて拘縮を助長するといわれています。よって同治療は受けるべきでないと考えます。
Q14顔面神経麻痺発症から1年が経ちました。顔のこわばりが強く食事の際に目が閉じてしまいます。ボツリヌス毒素治療を受けた方が良いでしょうか?
顔面神経麻痺後に、顔のこわばりや、食事の際に目が閉じるなどの後遺症が出現することがあります。これらは顔面拘縮や病的共同運動と呼ばれます。顔面拘縮は、顔の筋肉が過剰に収縮しこわばりを感じます。病的共同運動は、動かそうと思った筋肉とは異なる顔の筋肉が動いてしまうため、口を動かそうとすると勝手に目が閉じてしまいます。麻痺発症後3か月頃から出現し、次第に進行します。ボツリヌス毒素治療は有効な治療法です。しかし、効果は約3か月で消失するので反復して投与する必要があります。そのため、リハビリテーションや手術と併用する治療も行われています。後遺症の状態を把握し、適切な治療法を選択することは容易ではありませんので、顔面神経麻痺相談医に相談することをおすすめします。
Q15顔面神経麻痺は再発しますか?
はい、再発することはあります。頻度は多くありませんが、これまでの疫学研究によるとBell麻痺やHunt症候群のようなウィルスが原因と考えられている末梢性顔面神経麻痺では5.9~8.9%と報告されています。再発の仕方は同じ側に再発する場合と反対側に再発する場合がありますし、再発の時期も人によってまちまちです。再発回数も1回とは限らず数回にわたって再発した患者さんもおられます。ただし、再発した麻痺の原因が以前と発症した時と同じ原因とは限りません。再発したことで腫瘍(顔面神経そのものの腫瘍や他臓器悪性腫瘍の転移など)が見つかったり、別の感染症だったりということがありますので、再発した時にはなるべく早く医療機関を受診してください。より専門的な医療機関をお求めの場合は、日本顔面神経学会のホームページからお近くの相談医を探してみてください。
各都道府県別に顔面神経麻痺相談医のリストを公開しています。受診の際にご活用ください。
相談医・指導士一覧